2020年10月の主な会員向け配信記事

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 20年夏需給〝宴の後〟に残る「後味」の悪さー2020年夏需給の総括回顧に代えて=20年09月の都府県飲用市場における「生乳不足」の極大化の中で、一部大手では、供給契約の厳しいPB牛乳の安定供給を優先させる立場から、09月前半にNB商品の製造を1週間弱にわたって停止するまでの、厳しい原乳繰りを迫られていた実情が浮かび上がった。しかし台風12号による09月下旬の北海道産生乳の供給途絶を〝不足のピーク〟として、国内生乳需給には潮が引くように、再び需給緩和圧力への警戒感が首をもたげ始める。

 09月も後半には、都府県の生乳生産が回復へと動き出し、道内産生乳に殺到した乳業からのオーダーには、キャンセルの嵐が吹き荒れ、道内に呼び戻された生乳は、道内の乳製品在庫へと吸収された。

 20年の生乳需給は通年情勢として、春先の「第1次緊急事態宣言」期間を中心とした緩和局面に続き、09月には例年以上厳しい不足に喘いだが、秋を迎えて再び緩和へと、激しいまでの乱高下を見せる。この「緩和~不足~緩和」という〝往復ビンタ〟の中で、業界内からは「この生乳需給の激しい変動を、市場や消費者にどう説明できるというのか…」との嘆き声も漏れる。

 09月の家庭用需要は予想したほど強くなかったという、今夏の〝結果論〟の中、不足を念頭に供給を絞った乳業では、秋に入っての供給回復判断の早さが、業績を分けそうな悲喜こもごもの話も交錯する。

 2020年夏需給の〝淡い夏の思い出〟とは、おそらく乳業界にとって、腫れ加減に赤らんだ頬をさする時に抱く、ほろ苦い後味の悪さと切なさのような記憶とともに、心に刻まれる…。(2020年10月05日配信)